薬師寺
薬師寺は天武天皇9年(680)に天武天皇が皇后鵜野讃良皇女うののさららのひめみこ(後の持統天皇)の病気平癒を祈って発願されました。しかし、天武天皇は薬師寺の完成を待たずに崩御され、持統天皇が即位し新都藤原京に薬師寺が造営されました。 697年には、本尊薬師如来の開眼が行われ、翌年には構作が終わり僧侶を住まわせたことが『続日本紀』に記されています。 710年、元明天皇の命により藤原京から平城京へと遷都が行われます。遷都にともなって薬師寺も平城京右京六條二坊の現在の地へと遷りました。当時の薬師寺は、天平時代までは天下の四大寺の一つとされ、金堂・東西両塔・大講堂など主要なお堂は裳階がつけられ、 その壮麗な姿は「龍宮造り」と呼ばれていました。
しかし、歴史の中で多くの堂塔が火災や地震で失われてしまいました。特に、享禄元年(1528)の兵火は激しく、金堂、西塔、大講堂などが焼失しました。そのなかで唯一創建時から現存するのが東塔【国宝】です。(薬師寺HPより)
薬師寺HPより
つれづれに・・・
9月13日、憧れの薬師寺を訪れた。「凍れる音楽」と称せられる国宝三重塔(東塔)と西塔のある場所。
駐車場の案内掲示が分かりにくく苦労したが、たどり着くと、たわわなに咲く萩が迎えてくれた。南門に向かって直進する。両脇に裳階(もこし)をつけ六重に見える三重塔がその美しい姿を見せている。訪れた時は特別公開中で、東塔、西塔の中にある「釈迦八相像」(中村普也作)が拝観できるとのことで追加料金を支払い拝観した。南門を入ると正面に中門と連続した塀に至る。真っ赤な門を潜ると正面に金堂、左右に三重塔を見る。イメージしていた以上のこの景観でこころが踊る瞬間である。
薬師寺の建物の多くは新しく造り変えられている。「西塔」は1981年に建て替えられ、色彩も鮮やかで美しい。対する「東塔」は1300年前の白鳳時代。悠久の年月に耐えて建ち続け、モノトーンで力強い姿で、晴れやかな美しい西塔とは異なり対象的だ。新・旧の状態を同時にみられるのは珍しく貴重な体験である。
特別拝観で東西塔の中にある「釈迦八相像」を拝観した。堂内は心柱を中心に4面に造り込まれ、ぐるりと回ってみることができる。
金堂では国宝の薬師三尊像、月光、日光菩薩が安置され拝観できる。
この日は暑く木陰の無い境内は少々つらい。薬師寺に限らないが奈良の神社仏閣にはベンチが無いようだ。直前に訪れた唐招提寺には多くの木陰があり、気が休まったのだが。
薬師寺を出て距離をとってふり返ると、低い町並に程よく突き出した二つの美しい塔を望む。頂部の高く伸びた九輪、その上に印象的な水煙をかざし、薬師寺は町に溶け込み美しいシルエットを漂わせていた。
発 行 令和5年(2023)9月30日
発行No. No. 007
写心名 薬師寺(やくしじ)
撮影地 奈良県奈良市西ノ京町457
撮影日 令和5年(2023)9月13日
撮 影 歩人
編 集 矢崎英夫
発行者 つれづれ写心栞(しゃしんかん)
発行所 写心栞工房
京都府木津川市南加茂台1-9-16
連絡先 080-3217-3297